あなた

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初めて妊娠した時も、つわりは辛かったけれど、あなたに不便をかけないように頑張った。 私は良い妻だから、頑張った。 そして翔太が生まれ、私たちは幸せな親子になった。 あなたは家事も育児も手伝ってくれることはなかったけれど、私は専業主婦なのだから、そんなの当たり前だわ。 あなたはいつも帰宅が遅かったけれど、どんなに疲れていても不機嫌な顔を見せないように気をつけたわ。だって、飲み会でもゴルフでも、何だってあなたのお仕事に役立つはずですものね。 翔太がまだ小さくて手がかかったのでけっこう、いやかなり辛かったりしたけど。 けど、頑張った。文句を言ったりはしなかった。 帰宅が遅くても笑顔で迎える素敵な妻だった……はず。 けど……疲れた。 翔太が泣き止まないときや、具合が悪そうなとき、それからあなたの帰りを待っているとき、私、自分では気がつかないうちに泣いていることがあったわ。わりと度々あったかも。 こんなことでメソメソしていちゃダメよと自分を叱咤した。 いつも明るい笑顔でいなくちゃ私じゃない!
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