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タンスの上に降り積もった埃が舞う。私の体がタンスにぶつかるたびに、はらはらと、雪のように。
この役立たずが、という聞き慣れた罵声と共に蹴りが横腹に入れられる。私の体がもう一度タンスにぶつかり、またはらはらと埃が舞う。
悲鳴をあげそうになるが、ぐっと唇を噛んで我慢する。我慢していればいつか終わる。やまない雨はないさ……と誰かが歌っていたような気がする。繰り返される夫からの暴力の雨。ああ、雨よりも雪が良い。雪の方がずっと、優しい気がする。
40年生きてきたが、雪を見た回数は片手の指で足りる程。雪に埋もれてみたい、と私は目を閉じる。この時間が早く終わるように。何も考えず、何も感じず、私はただのモノになる。
最初のうちは殴られたり蹴られたりするたびに謝っていた。ごめんなさい、ごめんなさい、私が悪かったです……
でもそんな謝罪に何の意味もない、とある時気づいた。暴力の雨を降らせる夫には、私の声など聞こえちゃいない。否、聞こえていても聞く気がない。
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