赤い目の白い子猫

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どうしてここにいるのかわからない。 どうして鳴いているのかもわからない。 だけど、その柔らかい足音が聞こえた時、この猫は希望を持ちました。 「うわぁー… ちっさぁーい… かわいぃー…」 真っ白で、そして子猫であれば、誰でもこういうだろう。 だが、この少女は少々違った。 自分では抱きしめずに、「真由ちゃんが抱いて、春君に見せて来て」と言って、隣にいた真由夏に子猫を手渡した。 真由夏は大いに喜んで、「はい! お嬢様!」と叫んで子猫の顔を見て、「へー… 眼は赤いんだぁー…」と言って、子猫にほうずりをして立ち上がり、主人で兄の春之介のもとに急いで走った。 「お兄ちゃん、飼っていい?!」 真由夏が陽気に言うと、春之介は少し顔をしかめて、一瞬だけ真由夏と猫を見てから、「猫アレルギーの人っている?」と言って、トレーニング中の仲間たちに聞いた。 しかし誰も答えず、ほとんどが笑みを浮かべて首を横に振った。 「腹が減ってると思うからミルクでもやって。  そのあとに飼うか決めるけど…  もう飼うことになったも同然だよな…」 春之介はもうほとんど諦めて言うと、真由夏は、「お兄ちゃん! ありがと!」と大いに陽気に叫んで、夜の学校を出て八丁畷邸に入って行った。 そして、主人たちや仲間たちに猫を紹介してミルクをやった。 白い子猫はあまりのうまさに、夢中になってミルクを飲んだ。 ここまでは、この子猫は誰にでもかわいがられる普通の猫だった。 一時間ほどして、春之介たちはトレーニングを終えて八丁畷邸に戻ってきた。 そして子猫を上機嫌でなでている真由夏に笑みを浮かべた。 「俺は賛成だ」とこの家の本来の主人である、八丁畷春拓が胸を張って言った。 「反対はしないさ」と春之介は眉を下げて言った。 「それに、家に入れた時点で飼うことを認めるしかないじゃないか…」 春之介は答えて、笑みを浮かべて春之介を見上げている真由夏に笑みを返した。 「ますますかわいらしくなったし」と春之介が笑みを浮かべて言うと、真由夏はさらに目を細めて、子猫の体をやさしくなでた。 すると、春之介の大勢の仲間の女子たちが、真由夏と子猫を囲んで黄色い声を上げた。 そしてしばらくして、「こら! 逃げるな!」と男言葉で優夏が叫んだ。 子猫は素早く走って、春之介の足にしがみついたとたん、―― ご主人様っ! ―― と頭に浮かび、一気にその使命が頭を駆け巡り、そしてその体が硬直してしまった。 まさに、触れることが畏れ多いと感じたのだ。 「みんな、嫌がられたな」と春之介は言って子猫を抱き上げた途端、少し厳しい顔をしたが、すぐに笑みを浮かべた。 「こいつは俺の使徒。  …名前は…  クレオパトラと名乗っていたことがあるそうだ」 誰もが大いに目を見開いていた。 「ミラクルマンと関係あるわけだ」と春拓が言うと、「俺の足、が一番の仕事だろうね」と春之介は陽気に言った。 「今は好きに過ごしていいぞ」と春之介が言うと、クレオパトラと名前をもらった子猫は、春之介の膝の上で丸くなった。 「…う、動けない…」と春之介はクレオパトラに大いに気を使って言った。 「…あー、自由にしてるから…」と真由夏が悲しそうに言うと、クレオパトラは顔を上げて、真由夏に飛びついた。 「あははっ! 来てくれてありがと!」と真由夏が陽気に言うと、「お母さんらしいぞ」と春之介は笑みを浮かべて言った。 真由夏はお母さんぶることなく、大勢の仲間たちとともに、子猫鑑賞を始めて癒された。 「パトラが現れて楽になった。  明日、青森県の恐山に行ってくるよ。  交通機関を使わなくて済むから、  ロスタイムなしで移動できる」 春之介は陽気に家族に話した。 この白い子猫のクレオパトラが、奇跡の人、ミラクルマンの第一の僕となった瞬間でした。
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