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 その高台にある広い公園の丘には、小さな猫の石像があった。  訪れる人が気に留めることも少ないオブジェ。  それは大人の背丈ほどの土台の上に据えられていて、町全体を見渡しているようだった。  その日の夜、その公園に高齢の男が一人やってきた。  脚を引きずり、杖を突き、ぎしぎしと音を立てながら、ゆっくり、ゆっくりと前に進む。  一歩進んでは休み――  休んでは二歩進み――  そんなふうにして、ゆっくり――  ゆっくりと――  やっとのことでそのオブジェの横のベンチに辿り着くと、男は身を投げ出すように座り、白い息を吐いた。  呼吸が整うのを待つ。  それから――  石像を見上げた。
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