2人が本棚に入れています
本棚に追加
➀
その高台にある広い公園の丘には、小さな猫の石像があった。
訪れる人が気に留めることも少ないオブジェ。
それは大人の背丈ほどの土台の上に据えられていて、町全体を見渡しているようだった。
その日の夜、その公園に高齢の男が一人やってきた。
脚を引きずり、杖を突き、ぎしぎしと音を立てながら、ゆっくり、ゆっくりと前に進む。
一歩進んでは休み――
休んでは二歩進み――
そんなふうにして、ゆっくり――
ゆっくりと――
やっとのことでそのオブジェの横のベンチに辿り着くと、男は身を投げ出すように座り、白い息を吐いた。
呼吸が整うのを待つ。
それから――
石像を見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!