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⑥
「石になっちゃうの? 身体が?」素っ頓狂な声を出してしまったシンヤ。
ヒカルは、そうだと頷く。
「“進行性石化性繊維異形成症”という奇病じゃよ。治療する方法はない」
「うわぁ……可哀そうだなあ」
ヒカルは目を瞑りながら深く頷き、話を続けた。
「それから5年後、オーロラの皮膚は体毛と共に、ついに完全に石になってしまったのじゃよ。内臓が石化するのも時間の問題じゃった」
シンヤはじっと聴いていた。
ヒカルは続ける。
「儂はオーロラを救うためのヒントが得られないかと思い、父の伝手で手に入る医学的な文献に片っ端から目を通した。記されている言語や専門的な解説を理解するためには学力も必要じゃった。それで、がむしゃらに勉学にも励んだ。じゃがの……」
「役立つ情報はなかったんだね?」
「……そういうことじゃ……」ヒカルは言いながら、ゆっくりと……不自然なほどにゆっくりと……首を動かしオブジェを見上げた。
「あ、もしかして!」丸くなっていたシンヤが立ち上がった。「その猫の石像は――」
シンヤが何を言おうとしたのかを悟ったが、ヒカルは何も返さなかった。
言葉を続けられなかったシンヤは、再びコートの中で丸くなる。
ただ、すぐそばの石像が昔は生きていたに違いないのだろうと思いの中で処理する。
それから、ヒカルが何か話し始めるのを待つことにした。
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