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「弟だったの? 妹だったの?」シンヤが尋ねる。  ヒカルの母親の妊娠の話が気になったようだ。 「……妹だったよ」ヒカルは石像を見上げたままの姿勢で答える。「じゃがな……結局……生まれてはこなかったんじゃ」 「え? どうして?」シンヤは首を傾げた。 「……」  再びの沈黙――  木の葉がさわさわ――  しばらくして収まる。  いくつもの星たち――  ふるふると輝き、ちろちろと瞬く。  木の葉がかさかさ――  それから静まる。  しんしんと――  夜が、一層降りてくる……  ……降りてくる。  シンヤがくしゃみを一つ。  辺りにキン、と響いて、鼻がつん、とした。
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