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幸せデート旅
部屋に戻ると、もうジョナサンは私の引っ越しを終えていた。
隠し部屋の入り口は把握しちゃった。ここにいるのね?見たくもない虫が。
インフェルノホルニッセ。前に助けてくれた、猛毒蜂。
もう駄目だと思っていた私は、寄って集って襲われたと思っていた私は、あの蜂に、それを使い魔にしていた彼に助けられた。
内緒にしといてくれる?
他愛ないイタズラを誤魔化すような軽い口調で。
4人、貴方は殺したのよ?
同じように、貴方はまた。
インフェルノホルニッセだけでなく、貴方は他にも。
部屋のソファーで、温かい微笑みを向ける貴方に、私の心は奪われちゃっている。
「どう?気に入った?間取り。でもさあ、風呂が狭いよね?しばらく暮らしたらさ、あっちの家族寮に引っ越さない?」
「引っ越し?今日私が引っ越したばかりなのに?家族寮に引っ越すなら」
え?ううん。ジョナサンは唸った。
何故唸るの?
家族寮には、結婚した教員にしか割り当てられないのよ?
ちゃんとしてよね?私に、ちゃんと。
まあ、大体解るわよ?お金、ないのよね?
アリエールが、校長に土下座して、お願いしてたのを見たって言いふらしていたのを知ってるもの。
今、君はブロンズで、お給料は私の半分しかないんでしょう?
納得は行かないけど、私と君の間には理不尽な格差があって。
実績においても、実力においても、君は私なんかよりはるかに強いのに。
まあいいわ。赤ちゃん出来ればするしかないんだし。
「ねえ、明後日から連休でしょう?」
「ああ。昔、魔王の奴が定めたんだよなあ。4月末から5月初週にかけて。調べたら、夏にはお盆休みまであったが、あれは忘れられたんだったね。お盆て何だろうな?今度あいつに聞いてみよう」
素早く気持ちを切り替えたのね。そう言うところも好き♡大好き♡
「それでね?連休を利用して、どこかに行かない?校長先生がご褒美だって。宿泊経費は領収書持っていけば出してくれるって」
君の目が、ループ硬貨に変わってるわよ?
「ああうん!そうかー!どこ行こう?!西の大陸でジャングルツアー?!伝説都市アガルタで砂金採り?!あああ!生徒時代出来なかったことが出来るぞ!」
虫も泥も嫌よ?
ああ、君の論文に答えはあるのね?ちゃんと読んどけばよかった。
「まあ、どこに行くか2人で決めよう?君と2人っきりで行けるならどこだって楽しいに決まってる!」
「そうね?婚前旅行だものね?」
ビクっとなった彼に、私は、校長先生に渡された雑誌を置いた。
雑誌には、何故かゼクシィって書かれていた。
よく解らないけれど、私、面倒臭い女になってない?
露骨に狼狽えた婚約者を、私は真っ直ぐ見つめていた。
珍しく、彼の目と、私の目は合うことはなく土曜の夜は終わろうとしていた。
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