邪徒罰滅

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邪徒罰滅

消えたジョナサンを追って、信徒達は周囲を見回していた。 あ、あれを!誰かが指差した。数千の視線は、薙ぎ倒し、持ち上げられ、火刑に処されようとしていたラピスと、飛行挺の甲板からこちらを見下ろす、ジョナサン・エルネストにも、同様に注がれていた。 「おのれ!どうやって?!誰か!転移魔法が使える者はおらんか?!はようあの異端者を殺せ!」 「殺せ。とは随分乱暴ですね」 転移して現れた彼女に、フンボルトは反応した。 「いつからここにいた?ソルスの聖女よ」 「とっくにおりましたよ?貴方には、堪忍袋の緒が切れました」 突如、空中に静止した彼女は、髪を発光させていた。 「うぬは決して許さぬ。業火で焼かれよ。この地に破滅を」 恐ろしい火力で、フンボルト・グロウシュラーは焼き尽くされていった。 「土の巫女よ。愚劣な老年に陵辱された娘よ。うぬの覚悟、しかと受け取った」 「感謝します。いと高きソルスよ」 信徒の手によって、トーチに火がかけられ、生きたまま焼かれると同時に、ラピスは祈りを捧げていた。 町が、今まで起きたこともなかった、未曾有の大地震に見舞われた。 悲鳴を上げる暇もなく、崩れた聖光塵教会の瓦礫が、信徒達を押し潰し、巨大な地割れに飲み込まれていった。 この世の終わりに信徒は怯え狂乱し、救世主の降臨を祈るが、彼等に救いはなかった。 セント・トーマスに発生した局地的な大地震は、隣接するトマス湖を揺さぶり、発生した大津波が、信徒達をはるか彼方に押し流し、町は完全に飲み込まれ、セント・トーマスがあった場所には、巨大な水溜まりが残された。 聖古都セント・トーマスに、堕落の町、ダムド以来となる破滅が起きていた。 高く高度をとった飛行挺から、水に飲まれたセント・トーマスに起きた大災害(ディザスター)を見下ろしていた。 町1つが消滅か。生きてる者はいるのか? 「ジョナサン!何よこれは?!」 「生きてたのか。メリー」 「生きてたのって、ええ?!あれがセント・トーマス?!何でこんな?!」 「この辺はまだフタエ造山帯にかかってる。局地的な巨大地震と、それに伴う津波で、全部が洗い流された。あいつは?あの2人は?」 「土の巫女、ラピス・ミラビリスは、命を賭して、背教者として滅したのです」 ああ、戻ってきたのか。 「ラピスの身に起きた悲劇について、今は口には出せませんが、土の巫女の領域はこの地でした」 なるほど。ジョナサンは小さく呻いた。 「巌の使徒を名乗っていた聖トーマスの史跡に、巡礼と称して土の巫女はここを訪れていた。造山帯そのものに対して、彼女は、大規模な発動遅延を、延々とかけ続けていたんだ。創世記は彼女の祈りだ。いなかった。50人の正しい者は。だから、彼女は、最期に」 「町が、水に沈んちゃったああああああ!くうううううううううん!!」 ルーシーの悲しい遠吠えと共に、悲しい事態は終息した。 フランチェスカの温もりを肩に感じながら、最悪な連休の終わりを感じていた。
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