セント・トーマス

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セント・トーマス

地方都市セント・トーマスは、神聖都市エルドアン初代法主、エルドアン・プロメテウスより10代遡る、原始の預言者イニエスタ・ジェベドの弟子、聖トーマスが、長い巡礼の末に命を落とした大岩を象徴として、死後教団が拓いた権威ある町だった。 住民の9割が神聖教徒でもあった。 町のシンボルは(いわお)。奇しくも聖トーマスが巌の使徒とも言われていたように、良質な玄武岩の産地でもあった。 年に1度、使徒数百人の巡礼の儀式を、見物する観光客でごった返すらしい。 まあ、色とりどりのランタンで照らされたナイトパレードって、デートに最適だよなあ。とは思う。 実際、巡礼パレードは明後日の水曜の夕方6時から始まり、列は2時間かけて聖光塵教会(せいこうじんきょうかい)の、聖岩トーマスロックに到達し、無数のランタンが天に昇っていく。 要するに、長い墓参りがそれで終了するらしい。 さてなあ。俺としては、町に着くまでの間が肝だと思っているんだが。 俺もう2日寝てねえよ。 不自然な休憩が計8回あったの♡ あー気持ちよかった♡草原でのべつまくなしに絡み合ったね♡俺達は♡ いつもの教員の制服じゃなくて、よそ行きのドレス着てたの凄い新鮮だった♡ ドレスって脱がす時凄く興奮するんだ♡ 「あ♡ああ♡なってる♡君の♡君のに♡」 譫言みたいに言ってたが、うん♡確かになってたね♡俺の形に♡ 流石に足腰立たなそうだったから、俺が抱き抱えて最高級のホテルの部屋に運んだんだ。 それで、俺は1人で町を歩いているんだけど。 流石に地方の古い宗教都市に爬虫類とか売ってる訳ないし。 あん?この匂いは?ーーあ。 向こうも俺に気づいていた。 あー。あいつは今いないんだよな。きっと何か忙しくしてんだろうな。 俺の親友、タルカス・シーボルトが狙っていた娘。 「何で、ここに?エウリアデ。エウリアデ・キプロス?」 「君こそ何故セント・トーマスに?英雄君?」 恐ろしく綺麗な顔立ちは、アカデミー時代から全く変わっていなかった。
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