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目の前で板書をしている山上先生の初めての授業を思い出す。男子女子どちらからも質問が止まらず、彼女の有無や好きなタイプなど、皆がそれぞれに知りたいことをとにかく投げつけた。だが先生の口からは誰もが納得するような答えが出ることはなく、投げつけられた質問たちは次々にひらりはらりとかわされていった。動じるでもなく、叱るでもなく、ただ相手にしていないのだと突きつけるような先生の言動は興味でいっぱいになった生徒たちの好奇心を少しずつ削いでいった。そのうちに先生に興味を持っていたほとんどの生徒たちは、手短に扱うことのできる同級生や先輩たちとの恋心のやり取りで頭をいっぱいにしていった。そしてようやく、先生はひとりになった。ううん。この授業だけで言えば、先生は私と二人きりになった。誰も彼もが暇を持て余すこの時間に、先生はやるべき事を終わらせるためにチョークを割って、私はそんな先生の後ろ姿を見るために眠い目を擦っては背筋をしゃんと伸ばして席に座る。
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