伯父の太陽

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伯父の太陽

俺が中3の時、何と無く、俺の実力は太陽さんと互角ぐらいに成長していると感じていた。そんな矢先、兄貴と太陽さんが真剣に実戦組手で勝負しようという流れになった。俺は胸が高鳴った。小さい頃から全く歯が立たない才能溢れる兄貴が、元プロの太陽さんにどこまでやれるのか……。 結果、兄貴は太陽さんとの組手で圧勝した。俺は兄貴との力差を改めて実感したのだが、俺にも兄貴に勝っている部分が1つだけあると考えていた。それは、洞察力。 例えば、寸止めの組手で兄貴の攻撃を止める距離が俺達と比べて倍以上だという事に気付いている。恐らく、万が一にも当たらないようにする配慮だと思うが、殺し屋になろうという人にとっては仇となる優しさかも知れない。 伯父にもクセがあって、攻撃をする前に少しだけ肩が開く。ボクシングで言うとテレフォンパンチと呼ばれるヤツだと思う。敵と正対しての勝負だと致命傷になるかも知れない。かなり昔に3人を殺したと聞いたが、全て暗殺だったので問題無かったのだろう。 「拓水(たくみ)は強くなったな……。もう S よりも強いかも知れんな」 太陽さんがよく口にする S という人物……。知る人ぞ知るという殺し屋らしい。太陽さん曰く、自分より強く父さんより弱いとの話だ。俺や兄貴はもちろんの事、父親も見た事が無い人物らしい。 「だが、実戦では俺が勝つだろう。人を殺した経験というのは、お前達の想像以上に勝敗の命運を分けるからな」 太陽さんが兄貴にそう言った時、負け惜しみだとしか思えなかった。恐らく兄貴もそう思っただろう。 それから2年の月日が経った4月のある日、父親が俺達兄弟を集めて告げた。 「今日で殺し屋稼業から足を洗う」と。 時代の流れと共に、暴力団への取り締まりが厳しくなり、殺し屋の需要が無くなっているからだと言う。事実、父親も10年以上殺しをしていないという話だ。 俺達兄弟は殺し屋稼業にデビューする事無く、殺人に手を染めずに引退した。殺人なんて経験せずに真っ当に生きていけるなら、そっちの方が良いに決まっているという父親の配慮だろう。俺達家族が遊んで暮らせる金は金庫に入っていると言う。もちろん、銀行になんて預ける事は出来ない金だ。
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