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真っ直ぐ近づいてくる男が三人を見据えながら言った。敵意は感じられないし男からは落ち着いた気配がする。それでも警戒を切らさない三人。
何故ならば、この男には一切の隙が見当たらないからだ。最高の『錬巧の騎士』たちでありながら見つけられない、つまりこの男はただ者ではないということになる。
「……突然失礼しました。この辺りで『ワールド』を感知して確認に来たのです」
「あなたたちは騎士だね?佇まいが普通の人間じゃないことから相当強いんだろう。あなたたちが感じた『ワールド』は私が使った物だよ、これでも『探索者』だからね」
「『探索者』?エマリエーカ王国のですか?」
「ああ。これから探索に向かうからその準備運動をしていたんだ。自然を壊したりはしていないから安心してくれ」
「へい旦那、『探索者』にしてはえらく強そうに見えるけど前職に何かやってたのかにゃ?」
「大したことはしていないよ。まぁ、一時は世界を変えようと考えていたけれど、今ではごく平凡な『探索者』をやっている身だね」
「へえ?世界を変えるってどんな風に?」
「人類を滅ぼすとかだね」
ナタリー、パーキ、デムズの鼓動が不規則に弾む。口にした言葉に淀みが無かったからだ。
束の間の緊張感。周囲を静寂が満ちようとしたタイミングで男はニッコリ笑って、
「すまない、持ちネタの冗談だよ。何分強いせいで同じような質問をよくされているからね」
「び、ビックリさせないでください…」
「ハハハ。では私はこの辺で探索に向かわせてもらうよ。エマリエーカ王国に行く途中に邪魔してすまないね、それでは」
男は背を向けて歩き去ってしまった。残された三人は顔を見合わせてからエマリエーカ王国へ飛び立っていく。
「なんだか不思議な人でしたね」
「すごく強そうでしたもんね」
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