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「うぉっ!? 静と俺また同じクラスじゃんっ」
「本当だ。違うクラスになった事無いよね」
「確かに! 幼稚園から数えたら相当長いぞ!」
「腐れ縁ってやつ」
学校に着いて早々、クラス発表の掲示板を確認した。コウちゃんとは一度たりとも離れた事がない。
お互いの家は徒歩5分の距離にあるし、クラスはずっと一緒だし。
「ま、静は俺から離れられない運命だから」
「何それ」
わざわざ家から1時間程かかる高校へ進学を決めたというのに、コウちゃんは先生から散々勧められた自分のレベルに合った高校を選ばず、わざわざ俺と同じ高校を選んだ。
苦手な勉強を必死に頑張ってまで。
そうだ、俺が彼にそうさせているのだ。
実際はコウちゃんを手離せないでいるのが俺。
「コウー! 何組だった?」
「あ、美菜! A組A組!」
前同じクラスだった女子生徒がコウちゃんに声をかける。
今の彼女は何人目だっけ……。
もう数えるのもうんざりするくらいコウちゃんは彼女を取っ替え引っ替えしている。
大体はコウちゃんが先に冷めて別れるパターン。
でも、彼がそれだけ愛情を求めている理由を理解している俺には批判なんて出来ない。
コウちゃんだって抱えているものはある。
だけど、俺よりずっとずっと強い人だから自分よりか弱い俺の事ばかり優先してしまうのだろう。
彼女をいくら取っ替え引っ替えしたって友達をいくら増やしたってコウちゃんが本当に信頼している人間は俺くらいな気がする。
「またコウと同じクラスかよーっ」
「またよろしくなー!」
始業式を終え、教室に行くとコウちゃんはすぐに友人達に囲まれる。
そして、俺は自分の座席を見つけるとすぐさま読まないでおいた小説を読み始める。
親友だけど、常に一緒にいるわけではない。
昔からコウちゃんが他の友人達と過ごすと決めた時はいつも本を読むか勉強をするかしかない。
他のクラスメイトと関わる気は一切無かった。
本を読んでる間は本の中に現実逃避が出来るから気が楽だ。
俺が住む世界は本に出来ないくらい退屈で息苦しい。
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