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「コウちゃんのお母さんも癌だったよね」
「ああ。みるみる細くなっていって弱っていく姿を目の当たりにする辛さは俺も分かる」
「何で皆先に行っちゃうんだろうね」
「静には俺がいるだろ! 俺は静より先に死なない自信がある!」
「いつも気になるけど、どこから来るの? その自信」
「俺だけは静を悲しませる人間になりたくないって思いが強いから!」
小6の時に母親が癌で亡くなってすぐ父親が再婚し、新しい家庭の中で孤立していくコウちゃん。
なのに自分よりも俺の事ばかり気にかけている。
俺はそんなコウちゃんに甘えて、依存している。
良くない事だと分かっても。
それが当たり前になってしまったのは全部俺が弱かったせい。両親を亡くしてすぐ、俺が自殺をしようとしたから。
「静ー! 今日、静んち泊まっていいー? ゲームの対戦相手になってよっ」
「良いけど……」
「やったっ」
両親が亡くなってすぐコウちゃんは心配してやたらうちに泊まりに来るようになった。
「皇くんと静は本当に仲良しねぇ」
「俺と静は親友同士だからなっ! な、静っ」
「そうだね」
小学校に入った辺りから自分の中にあった違和感は感じていた。それが何なのかはっきりはしていなかった。
「やった! 静に勝ったっ! 次は何で対決する?」
「何でも良いよ。コウちゃんがやりたいゲームなら」
コウちゃんが泊まりに来る度、パーティーゲームや格闘ゲームでひたすら遊んだ。
だけど、どれも俺の中にある悲しみを埋めてはくれなかった。何をしていても両親との思い出が頭をよぎり、苦しくなる。
この苦しみから解放されたくて仕方が無かった。
だから、ずっと考えていた。
俺も両親のいるあっち側へ行ってしまった方が良いって。
もしかしたらあの日俺だって死んでいたかもしれないのだ。
だったら、タイミングが遅れただけの話。
勉強机の引き出しにずっと果物ナイフを忍ばせていた。
それさえ使えばいつだってあっち側に行ける。
祖母が朝から出かけている日の事だった。
誰もいない日に死ぬ事を決めていた俺は勉強机の引き出しを思い切って開けた。
だけど、そこにあった筈の果物ナイフは入っていない。
祖母の仕業だろうかと考えると今になって祖母を悲しませたんじゃないかと不安になってきた。
せっかく祖母が俺を引き取ってくれたのに俺は自分の苦しみから解放されたくて……。
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