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「静ーっ! 一緒に学校行こうぜっ」
外からコウちゃんの大きな声が聞こえ、俺はすぐさま家を出る。
「コウちゃん……」
「今日朝からばあちゃん居ないんだろ?」
「うん……」
「大丈夫か? 顔が青いぞ? 静」
「僕……僕……」
「もしかして引き出しの中の果物ナイフを探してた?」
コウちゃんの言葉に驚くも、俺はゆっくりと頷いた。
「ごめん。気付いて隠したのは俺」
「コウちゃん……」
「ばあちゃんには話してないよ。ショックで倒れたら大変だから」
「コウちゃんには隠し事出来ないね」
「静……死のうとしてたんだな?」
「ごめんなさい。苦しくて苦しくてもうどうしたら良いか分からないんだ。いつもお父さんやお母さんの事ばっか考えて寂しくて寂しくて……」
「バカッ! だからって静までいなくなるなよ! 俺もばあちゃんも悲しむんだぞ!」
コウちゃんはこの時初めて俺の前で泣いた。
「コウちゃん……」
「頼む。俺の為に生きててよ、静。静がいなくなったら俺が父ちゃん母ちゃん亡くしたばかりの静と同じ苦しみを味わう事になるんだぞっ!」
「それは……」
「俺だけは絶対静より先に逝かないって約束するから」
「そんな無茶だよ」
「絶対絶対約束する! 俺だけは静を悲しませない! だから、お願い! 俺の為に生きててよ。静が辛い時はいっぱいいっぱい静が笑えるようになる事考えるから」
コウちゃんは俺の手を取り、泣きながら懇願した。
そんなコウちゃんを見ていたら罪悪感で涙が止まらなくなり、俺は何とか思い止まり今日も生きている。
だけど、それがいけなかった。
自分の中にある気持ちを具体化させる出来事でもあったのだ。
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