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「これから静んち泊まりまくって良い?」
ふと過去を振り返っていたが、コウちゃんの言葉で我に返った。
「だめ」
「えー! 何でだよ。昔みたいにゲームしまくろ」
「言ったでしょ。昔の俺は心が弱かっただけ」
「でもよ……」
「俺とコウちゃんはずっと一緒に居られるわけじゃないんだから」
2年後にはそれぞれ別々の進路に行く。
いい加減自立しないと。
「静はすぐ我慢するから心配なんだよ」
「叔母さん達が気にかけてくれて最近ではよく電話を貰えるんだ。だから、寂しくないよ」
「本当か?」
「俺をばあちゃんに預けた事ずっと後悔してるって。悪い人達ではないんだ。だから、辛くないよ」
「でも、静んちにはやっぱりたくさん行きたい」
「だーかーら……」
「一人で食う飯ほどきついもんないだろ」
「それはコウちゃんの話?」
「とにかく、行くから! 静の作る飯が一番美味いし」
彼は1ミリも俺の気持ちに気付きやしない。
その事実がただただ残酷に思える。
「いっただきまーす! おぉ、美味そう!」
「本当オムライス好きだよね」
「静の作るオムライスは格別だからな。静が女子だったら嫁にするのになー!」
コウちゃんの言葉に胸が痛む。
悪気がないから尚更きつい。
「俺が女子だったらコウちゃんみたいな遊び人とは付き合いたくないよ」
「だよなー! 俺もそう思うもん。あ、そういえば! 今日クラス替えしたじゃん? 静、良いなって思う子いた?」
「今日の今日だよ? どんな子がいたかとかいちいち覚えてない」
というか興味すら湧かない。
女の子にときめいた事なんて無かったから。
「静って本当女に興味無いよな! あ、でもこないだSNSに静との2ショット載せたら色々コメント来た! 隣の男子が美少年すぎるって!」
「それが何?」
「SNSでも始めてさ、交流深めるのも良いんじゃないか? そういう出会い方もあるし」
「いらないっ! 興味ないっ」
「えっ……」
「あ、ごめん……俺、そういうの疎いし好きじゃないからさ。自撮り……とか」
コウちゃんは自分以外とも関わって欲しいと思ってるみたいだけど、俺には難しかった。
コウちゃん以外の人間にどうやって心を開いたら良いのか分からないから。
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