第1話 好きになってごめん。

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第1話 好きになってごめん。

小さな頃から人付き合いはあまり得意ではなかった。一人っ子で人見知りが激しく、小さな頃は両親の背中に隠れてばかりいた。 俺はいつもいつだって誰かに守られていると思う。 「静ー! おっはよー!」 俺の部屋に向かって叫ぶ親友は今日も朝から元気だ。 「コウちゃん、いつも言ってるでしょ。朝から声デカすぎ。近所迷惑」 「それより早く支度しろよ! 今日から新学期だぜ」 「クラス発表そんなに気になるの?」 「静と同じクラスが良いからさ! 色々助かるし」 「すぐ支度するからリビングで待ってて」 幼稚園から今迄、コウちゃんとは違うクラスになった事がない。ずっとずっと一緒にいる。 「ばあちゃんはー? まだ入院長引きそう?」 「うん。まだかかるみたい」 「寂しく無いか?」 「別に。もう高校生だし」 俺、雨宮静には両親が居ない。 小学3年生の時に交通事故で亡くなった。 あの事故で俺だけは幸い一命を取り留めたけど、幼くて何も出来なかった幼い自分を悔やんでいる。 あの時、自分も亡くなれば良かったと思った事は幾度もある。 そんな俺を大事に育ててくれたのは祖母だ。そんな祖母との別れもそんなに遠くない事を俺は自覚している。 いつだって皆、俺より先に行ってしまう。 「ばあちゃんの見舞い、俺も行って良い?」 「良いよ。きっと喜ぶ」 「ついでに静んちで飯も食うわ」 「また俺に作らせる気だ」 「静の作る飯は美味いからな!」 コウちゃんこと一ノ瀬皇は幼稚園の時からの俺の幼馴染であり、俺が唯一祖母以外で信頼する人物だ。 「何が食べたいの?」 「オムライスッ」 もし、彼が側に居なければ今頃俺はこの世に居ないとさえ思う。 「ケチャップのオムライスだよね?」 「ああ。ケチャップたっぷりのなっ」 「お子様舌だよね、コウちゃんって」 「お子様舌で悪かったな!」 いつもコウちゃんは……俺が思い詰めないか心配しているような気がする。
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