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晩のうちに降った雪が、晩冬の温柔な陽射しによって、やんわり解けていく昼下がり。
窓の向こう、薄青い空、まばらな細い雲、窓辺に座り込んでそれを見つめる、うちの猫。
五年前に迎え、すぐにすっかり我が家の核となったメルは、住処を熟知し、常に居心地のよい場所を見つける天才だ。冬は暖かいところへ、夏は涼しいところへ、たとえその道が険しかろうとも、彼女にとっては、居心地のよさに代えられるものはないらしい。
私は時折、メルを見失う。
きっと、かくれんぼをしているのだ。声をかけても、名前を呼んでも出てこない。
健康体だと分かっているけれど、猫は死期を悟ると隠れてしまう習性があると知ってから、いつも私は、まさか何かあったのか、どこかで死んじゃったりしていないかと、家の中を探しまわる。
冷蔵庫の上、洗濯機のドラムの中、ローボードの下、閉じたはずの段ボールの中──、メルはかくれんぼが大好きだ。見つけてホッと胸を撫でおろした途端、「見つかっちまったニャ」なんて甘えて鳴く。まるで私の胸に飛び込んでくるみたいに、直線的に駆けてくる。
彼女はいつだって意地悪で、いつだって愛らしい。眠っていたって、ぐうたらしていたって、どんなときでも私の動きは彼女に筒抜けだと思える。たとえば、そっとレジ袋の音を立てれば、「おや、何かくれるのかニャ?」と近づいてきて、私の手元をまさぐり始める。そこで何もないと分かれば、今度は腹いせにレジ袋でわしゃわしゃ遊びだす。私は彼女が誤飲しないように、その様を最後まで見届けてから、自分の仕事をする毎日だった。
メルは一人っ子で、私以外に身寄りはなく、頼れるものと言えば獣医さんしかいない。五歳と言っても、言葉を話せず、本能の向くままに我が儘を言うばかり。隙あらばと膝に乗ってくるこの子が愛おしくないはずがない。
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