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冷めた大人にはなりたくない。
冷たい人間にもなりたくない。
何も憂えず、何も悲しまず、その時々を、懸命に生きる動物みたいに、不安や恐れを考えない自分でありたい。その時々に、上手く対処できる自分でありたい。
そしていつか、メルとコピアみたいに安らげる場所を見つけたい。
春が来れば、私にも色づく季節が訪れるかも知れない。
たとえ導火線が途中で切れてしまっても、運命の人はこの先にいる。
彼が、その人であればいい。
仮にそうじゃなくても、感情を育ててくれる人だと信じてあげたい。
思い上がった人間だって、地球から見れば害獣だ。ではそれら害獣である人間が、素直に殺処分されるだろうか。おそらく、駆除は予告なく行われる。かつて栄華を誇った恐竜が滅びたように、一瞬の怒りで焼かれるだろう。
人を支配する者、人を虐げる者、人を傷つける者、人を破壊する者が多い世の中。
彼らは決して満たされない。本当の温もりを知らないからだ。どこにも彼らの居場所など存在してはいないからだ。
私は手触りのない導火線を握りしめ、今ここにある熱を、確かに感じた。
この小さな救済が、実は代えがたい宝物であると知っている。
できる限り、純粋に笑って彼に伝えよう。
きみが好き。
魔法の言葉を伝えよう。
考えるだけで、くすっとうれしい笑みがこぼれた。
きれいな魔法が、私を励ます。
遠い未来に、今日の日を思い出し、私はそこでまた、幸せな魔法を感じられるはずだ。
さらにずっと未来に、魔法を分けてあげられる人になりたい。
導火線は、すでに火を走らせ、この世界の片隅で、優しい炎に変わり始めた。
それが弱い立場にある人の灯火になれたら、きっと、それ、すごくいい。
(了)
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