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私はその様を見て、ようやく決心した。
恋する人に、想いを告げよう。
きみが好きだと言ってみよう。
彼に想う人があることは知っている。その人に勝てる自信はまったくない。けれども、始まらないで終わるよりは断然良いと思った。たとえば日に十センチずつ近づいていくだけでも何かは変わる。彼に好きだと伝えないことこそ、私にとって後悔の種になるのだから。
私はスマホを取り、彼にメッセージを送った。
《導火線は、冬にこそ走り。この言葉の意味、分かるかな?》
すぐに既読マークがつき、返事が届いた。
《誰かの名言? そういうの、あまり詳しくなくてゴメン》
私はフフッと笑い、続けて返事を打った。
《恋の導火線に、火がついた模様です。もうすぐ、きみは爆発するでしょう。》
途端、驚いた顔文字と、怯えた感じの返事がきた。
《爆発を止めるには、どうしたら……???》
素直に教えてあげるのも悔しいので、私はただ一言だけ返した。
《もう遅い。》
今度は慌てた感じの顔文字と、彼の優しい声が聞こえてきそうなメッセージが届いた。
《まあ、いいか。うん、いいよ。爆発させて。どうせなら思い切り燃やして》
ふうん、いい根性してるじゃないの、と思ったところで、さらに彼からもう一言。
《てことで、二時間後、駅前で》
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