コーチカとズブロフカ

1/9
前へ
/9ページ
次へ
「ロマノフ王朝の人達って可哀想だなぁ」 歴史の余りの陰惨さに、思わず漏れ出た、私の心からの言葉。 「それは違うニャ」 応える様な声に振り向くと、そこには猫がいた。 会社の冬休みを利用して、友人と訪れた真冬のロシア。 その冬宮殿にある、かの有名なヨルダン階段で写真撮影をしていた時の事。 美しい冬宮殿に溜め息をつきつつ、有名なロマノフ王朝の人々の最期に思いを馳せ、私は思わず呟いた。 「ロマノフ王朝の人達って可哀想だなぁ」 「それは違うニャ」 応える様な声に振り向くと、猫がいた。 そうして、そのまま何事も無かったかの様に私の足元を、通り過ぎる大きく毛むくじゃらな猫。 (え、今の猫喋った……?) そう思い、振り向こうとした瞬間、今度は何かが私の肩にぶつかって来る。 バランスを崩し、頭から激しく転倒する私。 私が意識を失う寸前に見たのは、申し訳無さそうな顔で此方を見つめる、オレンジ色と毛むくじゃらの2匹の猫達だった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加