コーチカとズブロフカ

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「家族……?ロマノフ一家が……?」 それはおかしい。 だって、彼等が処刑されてから何年……いや、何十年経っていると思っているのだ。 (彼等が処刑されたのは、1918年なのよ?!) そう、今より約104年も前のことなのである。 それ程前に非業の死を遂げた彼等を、この目の前の猫は家族だと宣ったのだ。 (なら、この猫達は100年も生きていることになるじゃない) 生物的に有り得ない。 私の理性は必死にそう否定する。 しかし、私の本能はーー (いや……そもそも喋る猫なのよ?普通の猫と同じ様に考える方がおかしいのかも) そう、事態を何処か冷静に受け止めていた。 「少しは、落ち着いたニャ?」 私が事態を飲み込むのを待っていたのか、そこで漸く、再度ズブロフカが口を開く。 「ええ、お陰様で……」 苦笑しつつ、その言葉に頷く私。 (だって、こんなの、もう信じるしかないじゃない) 目の前に喋る猫がいる事実は変わらないのだから。
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