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そんな私に、コーチカは満足そうに何度か頷くと、顔の毛繕いをしながら口を開いた。
「確かにニャ?アタシ達の家族は、それはそれは悲しい最期を遂げた。置いて逝かれたアタシ達は、そりゃぁ悔しかったし悲しかったよ。でもね、最期が悲しかったからと言って、その人生の全てを悲しいものだったとは思って欲しくはないのニャ」
「どういうこと?」
「ロマノフ一家は、その悲しい最期が有名ニャ。けれど、だからこそ……後世の人間達は皆、そこにばかり目を向けて、本当の彼等を見ようともしない」
そこまで語ると、悲しげに目を伏せるコーチカ。
しかし、彼女は再び顔を上げると、今度は真っ直ぐに私を見つめながら、言葉を紡いで来た。
「終わりが悲劇だからと言って、人生の全てが悲劇だった訳ではない」
深く強い確信を込めて告げられた言葉に、私は、はっとする。
(確かに、そうだ)
悲しい最期ばかりに目がいってしまいがちだけれど、皇帝もその家族も、溢れんばかりの悲しみをその身に宿して産まれ落ちた訳ではない。
楽しい記憶や幸せな思い出だって、沢山あった筈だ。
(私だって……もし、自分が死んだ後、この人の人生は全てに於いて悲しみしかなかった、みたいに思われたら……うん、それこそ、本当に悲しいかもしれない)
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