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それから……私達は、どれ位話していただろう。
私は、彼等から沢山の話を聞いた。
例えば、ロマノフ一家の娘達が全員麻疹にかかってしまい、その後、髪の毛が変な伸び方をしたことから、なんと全員が丸坊主にした話。
その話を聞いた私は、とても仰天したものだ。
何故なら、髪は女の命とも言われているからである。
斯く言う私も、風呂上がり等には念入りにトリートメントをしている次第だ。
その、命とも言われている髪を切るどころか、丸坊主にしてしまうとは。
その豪胆さに、私は酷く驚くと同時に……どこか、彼等に逢ってみたい気持ちになった。
「うちのお姫様達は……特にアナスタシア様はお転婆娘でねぇ。家族への悪戯を常に考えていたりして、家庭教師からもやんちゃでひょうきんだと言われていたよ」
懐かしそうに話すコーチカ。
産まれた時代と場所が違っていればーーきっと、良い友達になれていたかもしれない。
今では、もう、全てが手遅れだけれど。
そんな思いが、再び私の目頭を熱くする。
すると、私の気持ちを感じ取ったのか、再度コーチカとズブロフカが私の頬を舐めてきた。
最初は少しだけ痛く感じた2匹のザラついた舌も、今では何だか心地好くて……何より、愛おしい。
(この時間が、ずっと続けば良いのに……)
2匹を撫でながら、頭の片隅でそんなことを考える私。
と、まるで終わりを告げる鐘の様に、私の名を呼ぶ声が響き渡った。
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