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「ロマノフ王朝の人達って可哀想だなぁ」
歴史の余りの陰惨さに、思わず漏れ出た、私の心からの言葉。
「それは違うニャ」
応える様な声に振り向くと、そこには猫がいた。
会社の冬休みを利用して、友人と訪れた真冬のロシア。
その冬宮殿にある、かの有名なヨルダン階段で写真撮影をしていた時の事。
美しい冬宮殿に溜め息をつきつつ、有名なロマノフ王朝の人々の最期に思いを馳せ、私は思わず呟いた。
「ロマノフ王朝の人達って可哀想だなぁ」
「それは違うニャ」
応える様な声に振り向くと、猫がいた。
そうして、そのまま何事も無かったかの様に私の足元を、通り過ぎる大きく毛むくじゃらな猫。
(え、今の猫喋った……?)
そう思い、振り向こうとした瞬間、今度は何かが私の肩にぶつかって来る。
バランスを崩し、頭から激しく転倒する私。
私が意識を失う寸前に見たのは、申し訳無さそうな顔で此方を見つめる、オレンジ色と毛むくじゃらの2匹の猫達だった。
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