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その時だった。再び警報音が鳴り響いた。
『火災が居住区に向かっています。第一動力炉が臨界圧力に近付いています。総員退船! 脱出ポッドへ!』
その放送に夫も驚きの表情を浮かべている。でも迷っている時間は無い。
私はベッドの上の娘を抱えると、部屋の外に飛び出した。
幸いの事に私達の部屋の向かいが脱出ポッド室だ。私がそこに飛び込むと夫も続いて来た。その部屋の壁には一人乗りポッドが並んでいる。
「ルナ! そのポッドにソラと乗るんだ」
夫が前脚で制御パネルを操作すると一つのポッドのガラスドアが開いていく。私はそのポッドの中に娘と一緒に乗り込んだ。
「レオ、貴方も早く……えっ?」
その時、外から激しい火炎が部屋に飛び込んで来た。尻尾越しにそれを見た夫が射出ボタンを激しく押すのが見えた。
その瞬間、ポッドの内側エアロックが緊急閉鎖され、ポッドが宇宙空間に射出された。ハッとして振り返ると船は爆発して真っ白な閃光に包まれていた。
「……そんな……、レオ……、みんな……」
モニターを操作して他の脱出ポッドを探したけど、脱出出来たのは私達だけだったみたいだ。
ポッドは回転しながら宇宙空間を漂っている。止めどなく涙が溢れて来る。
その時、娘が外を見ながら言った。
「……ママ、蒼い星が見えるよ」
それは私達が初めて見た、地球だった。
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