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それから旦那はまた長屋に籠もッちまって絵ばかり描いている。
けれどそれは以前の様に闇雲に描いてるッてよりは、描きたい何かを掴んでそれを描く為に遣っている様だった。
相変わらずおまんま喰うのも忘れがちだが、それでも煮売屋……現代で云うところの惣菜を売り歩く商売でさァ、そいつから何かしか買って食うようになって随分とマシに成ったもんでさ。
然うして数日が経った或る日、一人の娘が訪ねて来た。
「三ツ木慎之介さまですか? わたしは若紫姐さんから文を預かって……」
娘は言いながら涙で言葉を詰まらせた。
「若紫に何か……」
旦那は手紙に目を遣って、がくりと膝をつく。
文には此のような事が書き付けられて有った。
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