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チョコチップクッキー
「いらっしゃい。アルバート」
出迎えたのは祖母だった。
「婆ちゃん!」
駆け寄って近くで確認したが、間違いなく祖母であることに、アルバートは心底安堵した。
「いい香りがするね。いつものクッキーかしら?」
祖母がクンクンと鼻を動かした。
アルバートは苦笑いをした。
「ごめん、婆ちゃん。今日はクッキーはないんだよ」
祖母はまったく気にしてないようで、戸棚からクッキーを取り出してきた。
「いいのよ。余っているのがあるから。ほらほら、アルバートもお食べなさいな」
「いいの? 食べても……」
アルバートは少し躊躇いながらも、クッキーに手を伸ばした。
祖母はニッコリと笑った。
「いいんだよ、いいんだよ。前に、全部もらってしまったからね」
祖母もクッキーを一口齧ると、自家製紅茶を2人分淹れた。
紅茶を啜りながら、祖母は思い出したように言った。
「ああ、でも……チョコチップクッキーだったら是非食べたかったわ。私、チョコは嫌いだけれど、チョコチップクッキーは特別大好きだから」
アルバートは、え、と声を漏らした。
「婆ちゃん、チョコ嫌いだったの?」
祖母は頷いた。
「昔はチョコチップクッキーも食わず嫌いだったんだけど……食べてみたらこれがまた美味しくてねえ。それから特別大好きになったんだよ」
「へえ、食べてみたいな。どこの店のクッキーなの?」
祖母はクスクスと笑った。
「店……そう、店ね。その店はね、とある薬屋よ──」
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