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ところが──だ。店の外に出たはずのアルバートは、また店の中に戻ってきていた。──たった今出てきたはずなのに、と振り返ると──そこには見たこともない森が広がっていた。
「いらっしゃいませ。おかえりなさい」
行儀悪く店のカウンターに腰掛けたアリスが、ニッコリと笑う。
アルバートは踵を返し店を出たが……そこもまた店の中だった。
──なんで出られないんだ?
アルバートは頭を抱えて、その場で蹲った。
アルバートの肩にアリスはそっと手を置き、耳元で囁いた。
「言ったでしょう? お客だって」
出された紅茶(本当に紅茶なのか疑わしいが)をカウンターで啜りながら、アルバートはため息をついた──そんなアルバートに、何でもないふうにアリスが言う。
「薬を買わなきゃ帰れないわよ」
「そんなことを言われても、薬を買うお金なんて持ってきてないんだよ」
アルバートが持っているものといえば、祖母の見舞いにと焼いたチョコチップクッキーくらいだ。
「クッキーで薬が買えるなら話は別だけどね」
アルバートはそう言って、鼻で笑った。
「いいわよ」
「え?」
「私、クッキー大好き!」
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