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クローバーの葉
「本当に、本当に……! クッキーがお代でいいの?」
アルバートが何回詰めよっても、アリスは首を縦にしか振らなかった。
「お金はいらないわ。……ただし1つだけ約束して」
突然のアリスの態度の変わり様に、アルバートの顔は緊張で強張った。
「買う薬は、絶対に欲しいものを1つだけよ」
アルバートはコクコクと頷いた。
「で、何にする?」
アリスは心底楽しそうに、カウンターの上に腰掛け直した。
アルバートは小1時間悩み続け──アリスが居眠りを始めたところで、やっと決めた。
「決めたよ。アリス」
「……んん?ああ、なんだっけ?」
アリスは目蓋をこすり、猫のように大きなあくびと伸びをした。
「僕は、夢が叶う薬がほしい」
アリスはしばらくポカンとした顔でアルバートを見ていたが、やがて、ぎこちなく頷いた。
「なら、四つ葉の煎じ薬が1番ね!」
アリスはおもむろに、カウンターの下からミルク瓶ほどの大きさの小瓶を取り出した。中には、金粉でも被ったような模様の四つ葉のクローバーが1本入っている。
「静かにしててね。絶対に音をたてないで」
アリスが慎重に、慎重に瓶の蓋を開けたその時──アルバートが大きなくしゃみをした。
金粉のような模様に見えたそれは本物の細かな金粉で、瓶を開けた時に舞い上がったそれが鼻をくすぐったのだ。
すると、どうだろう──クローバーの葉の1枚がヒラヒラと床に落ち、泣き声を上げたではないか。
ギャーーー‼︎と耳をつん裂くようなその泣き声に、アルバートは思わず耳を押さえようとした。
「捕まえて!」
それよりも先に、アリスが叫んだ。
アルバートがわけがわからず動けずにいると……アリスが瓶の蓋を閉めながら、落ちた葉を指差した。
「逃げちゃう!」
アリスの言う通りだった。落ちた葉には足のような根が2本生えて、それは一目散に駆け出した。
「このままだと三つ葉になっちゃう!」
アルバートは慌てて駆け出した。
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