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「見つけたぞ!」
アルバートが掴もうとすると、クローバーの葉はヒラリと身をかわして、再び走り出した。
「こんなに、すばしっこいとは思わなかったわ……」
アリスがげんなりと呟いて、走り出した。
アルバートも後を追っていくと、小川に行き着いた。
「危ないわよ。こっちにおいで!」
アリスが手招きをしている先には、クローバーの葉がいた。橋がかかっているかのように倒れている木のすぐ近くで、まるで迷っているようにウロウロしている。
「危ないぞ!」
アルバート達なら問題なくとも、クローバーの葉ではこの川でも、一歩間違えば流されかねない。
「こっちへ!」
アルバートは右手を差し出したが、クローバーの葉は、お尻を叩くような仕草をして逃げていった。
どうやらアルバートのことがお気に召さないらしい。
「待て! 待てったら!」
アルバートとアリスは、またクローバーの葉を追って走り出した。
さて──今度は大岩の上
(とはいっても、それはクローバーの葉にとっての話であって、アルバート達から見れば少し大きな石)だ。
風で飛ばされそうになっているのを必死で堪えているらしい。クローバーの葉から生えている根が更に伸び、石にしがみついていた。
アルバートがアリスに、こっそりと耳打ちする。
「きっと僕じゃだめだ。アリス、君が呼んで」
「わかったわ」
アリスがクローバーの葉に向かって手を伸ばす。
「さあ、おいで。帰りましょう?」
クローバーの葉は少しの間、躊躇うように根をくねらせていたが、思い立ったらしい。石から根を離した。
「あ!」
アルバートとアリスは揃えて声を上げた。
クローバーの葉が根を石から離した瞬間、強い風が吹いて、クローバーの葉は天に舞い上げられてしまったのだ。
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