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AM 8:00
お姉ちゃんを起こすのはなかなか骨が折れる。今日もリビングから声をかけるが、お姉ちゃんの返事はない。私は野菜を炒める手を止めて、ため息をついた。8時までにお姉ちゃんを起こさなければならない。私は二つ並んだお弁当箱に玉子焼を詰めてからお姉ちゃんの部屋へ向かった。
「お姉ちゃん朝だよ、起きてー」
私は布団を揺すって声をかけるが、やっぱり返事はない。私はいつもの荒療治に出ることにした。
私は勢いよく布団をひっぺがして、窓を全開にした。冬の山麓から白い風が流れこむ。
「まなみ~もうちょっと寝かせて、、」
「駄目、これ以上寝たら遅刻するよ」
お姉ちゃんは猫のように背中を丸めて、寝ぼけ眼をこすりながら愚痴を言った。
「寒いし学校行きたくないなぁ、それにさ、まなみ何か焦げてる匂いするよ?早く行ってきな~」
言われてみれば確かにそうだ。野菜炒めを置いてきたままだったことに気づいて、私は慌ててキッチンに戻った。
「ちゃんと着替えるんだよ!」
去り際にお姉ちゃんを急かすのも忘れずに。お姉ちゃんはベットからひらひら手をふって私を見送った。
ギリギリセーフ。少し焦げちゃったが、私の弁当箱に入れれば済む話だ。リビングのトースターから食パンのいい匂いがする。私は食パンをかじりながら料理を続けた。
しばらくして、お姉ちゃんがリビングにやって来ないことに気がついた。私は嫌な予感がしてお姉ちゃんに声をかける。
「お姉ちゃん起きてる?」
「うん、今着替えてるとこだよー」
お姉ちゃんの声はどこかだらしない。まるで、寝言みたいだった。私はお姉ちゃんの魂胆に気がついて部屋に向かった。案の定、お姉ちゃんは布団を頭から被りながら眠っていた。私はまたため息をついた。ため息から笑い声も漏れた。私はお母さんの声を真似しながら叫んだ。
「早く起きなさい!」
リビングのテレビから快活なアナウンサーの声が聞こえた。
「おはよう放送局は8:00ちょうどをお知らせします」
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