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終わらせる能力
「はぁ、また来たんですか?」
少女はため息まじりに言った。俺は呆気にとられて、手に持った拳銃を降ろさざるを得なかった。
連邦政府から殺し屋として雇われた俺はある少女を殺すことを命じられた。なんでも彼女はとんでもなく危険な能力をもっているらしい。だが見たところ彼女はただの小学生だし、初仕事で緊張する必要もないようだ。
「俺は一回もここには来てないぜ。さあ大人しく殺されるんだ」
俺は再び銃口を少女に向けた。勿論、可哀想な娘だと思う。けれども政府の担当者が言うには、きっちり殺さないと返り討ちにあうのだそうだ。本当だろうか。前任者は彼女の能力ごと葬られたそうだが、殺しが下手すぎるのではないか?どうしようもない新人だったのだろう。
すると少女は声をあげて泣き出した。俺はまたびっくりして銃口をさげた。
「お兄ちゃん私とした約束わすれたんだ。覚えてるって言ったのに」
彼女は大方こんな感じのことを言った。弱ったな。この調子で泣かれたらたまったもんじゃない。いくら政府の命令といえど、警察に見つかれば厄介だ。俺はとりあえず彼女をなだめることにした。
「いや、俺は悪いやつじゃないからね、それに君のことも覚えてる」
すると少女はけろりとして俺に抱きついてきた。さっきのは嘘泣きだったんだろう。だが、それを指摘したらまた泣かれるかもしれないしなぁ。
「じゃあお兄ちゃんさ、私のこと殺さないよね」
俺は返答に困った。彼女は俺の正体を見透かしているのかもしれない。あるいは、ずっと昔から彼女は命を狙われる身にあったのかもしれない。
「ああ、俺は君を殺さない、約束する」
彼女の子を殺すなんてやっぱり間違えてる。俺は彼女の暗殺計画から身をひこう、そう決心した時だった。
少女がパチンと指を鳴らした。途端に視界が真っ白に変わった。そうやって彼女に殺される瞬間、僕は気づいた。僕らは物語をループしている。それを終わらせる能力を彼女は持っている、と。
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