13歳の夏

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「冗談だって、美鈴!」 「待て、ニッシー!」  ニッシーと美鈴が追いかけっこをしている姿をぼーっと眺めている翼にニッシーが「翼、パス」と日誌を渡してくる。  続いて後ろを走ってきた美鈴が「それ貸して」と美鈴が奪おうとするも翼は席を立ちそれを上にあげた。 「貸してよ」 「やーだね。ほら、ニッシー」  ニッシーがキャッチする。 「人の悪口を日誌に書くとか本当男子って性格悪っ」 「だから、あれは冗談だって」  ニッシーが日誌を庇いながら言う。 「女子だって今日は浴衣着なきゃーとか髪型どうするー?とか終業式そっちのけで朝盛り上がってたじゃん。そっちの方がめんどくさいって」  翼がニッシーの隣に立って言う。数ヶ月で別れたとはいえ、告白してきた隣のクラスの吹奏楽部の女子と付き合っていたことがあるニッシーはともかく誰とも付き合っあったことがない翼は本当に女心が分かっていない。その証拠に今だって女子の悪口を言っている。 「なんで翼が私の話聞いてんのよ」 「美鈴がぐっちや菜々子と話してたことがこっちにも聞こえてきたんだよ」 「そういうの盗み聞きって言うんだよ?知ってる?」 「別に聞きたくて聞いてた訳じゃねーし」 「分かる。女子がデカい声で話してたから俺と翼ともーりーでずっと聞いてたもんな」  もーりーは、ぐっちと同じ陸上部に入っている森崎雄大のことだ。仲良しグループの男子のなかだと、1番女子とか恋愛に疎いもーりーだけどもーりーにもそういう下心があったのかと知り美鈴は余計にイライラしてきた。 「ってか、美鈴達田中のところに行かなくても良いのか?」  ニッシーの言葉で美鈴はハッとして翼と顔を見合わせた。今夜の夏祭りも夏休みも田中の説教を聞きに行かないとはじまらない。 「やばっ」  バタバタと教室を出て行く美鈴に続いて「あ、美鈴待て」と翼が後を追いかけてきた。 「俺もさっさと日誌仕上げよー」  誰もいなくなった教室にニッシーの声だけが響いた。
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