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「そんな理由で人を殺したの?」
話している相手は、よく知らない男性だ。
私よりは随分年上、スーツを着ていれば社会人でしょ、といいたげな背広とネクタイは全然高価なものじゃないと衣類に詳しくない私にもわかるような代物で、くたびれた靴はかかともすり減っていてる。
なぜ、こんな男と向かいあっていなければならないのか。
「わからないはずだ。突き落としから縄を使っての絞殺、ナイフを用いた殺傷、毎回殺しの手口が違って動機もまるでつかめなかった。まさか、実験だったなんて」
私は笑い出してしまう。
「実験? そんなもの、してないよ」
私はただ、この目で見て、確かめたかっただけ。
死というものがどうやってやって来るのかを。
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