危険球

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場内アナウンスが近衛の代打を告げる。 ブルーソックスというだけあって、ヘルメットからユニフォームまで青で統一されている。 打席に入り、やや緊張の面持ちでバットを上段に掲げる。 近衛のバッティングフォームはスタンダードなスクエアスタンスからグリップの位置を顔の高さまで上げる。 右腕が口元を覆い、表情が見えないせいか、相手投手には不気味に感じる。 とは言え、それは二軍相手に通用するのであって、一軍の投手相手には単なる小細工にしか感じない。 これが一軍初打席となる近衛、心臓の鼓動は速まるばかりで平常心でいられるハズが無い。 (打てなかったらどうしよう…三振したら、凡退したらどうしよう…) こんなネガティブな気持ちで打席に立ってヒットなど打てっこない。 対するマウンド上の石田は余裕綽々で近衛を見下ろす。 「打てっこねぇよ、一軍半のヤツにオレの球は」 石田がサインを出した。 いつもなら、正捕手の関本がサインを出すのだが、ルーキーに等しい相手なら問題ないだろうという事で容認した。 (ヤッパ、最初はストレートなのかな)
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