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愛ゆえのざまぁ 2
「陛下、心から謝罪をさせて下さい。わたしは、あなたをだましていた罪を償いたい。あなたの側で、あなたにお仕えしたいです。わたしもあなたを愛しています」
彼は、わたしの心は感じているはず。
でも、言葉にしてそう伝えたかった。
ヴィクトルの姿を数日間見ないと思っていたら、彼はひょっこり現れた。
見たことのない男性を伴っている。
「カヨ?驚いたな。カヨじゃないか?」
男性は、わたしを見るなり驚きの叫びを上げた。
無精髭に覆われた顔にある瞳に見覚えがあるし、さわやかすぎる声にきき覚えがある。
「まさか、叔父様?ロック叔父様?」
行方不明の父の弟ロック・アルベリーニである。
「事情は彼からきいた。兄貴が亡くなったこと、アルベリーニ家が性悪母娘に乗っ取られていること、それから、きみのめでたい話も」
記憶にある叔父よりずっと体格がよく、ワイルドになっている。
彼は、わたしをしっかり抱きしめてくれた。
「おめでとう。きみはしあわせになるべきだ。いままで好き勝手させてもらってきみにも苦労をかけたが、おれもそろそろ地に足をつけるべきだな。ちょうどいい機会だ。兄貴の遺言通り、アルベリーニ家に戻って家を立て直すよ」
「叔父様、よかった。本当によかった」
それにしても、ヴィクトルはよく叔父を見つけてくれたものね。
「きみに残っている彼のわずかなにおいで追ったわけだ。大陸の端まで行かなればならなかったけどね」
小柄で可愛いヴィクトルは、可愛すぎる笑みを浮かべた。
というか、わたしに残っている叔父のにおい?
どれだけ鼻がきくの?シンプルに
「さあ、これで役者は揃った。ひとっ走りきみの祖国に行き、わたしたちの婚約を正式に発表するとしよう」
皇帝陛下がさわやかに宣言したけど、どういう意味なのかよくわからなかった。
そして、早速実行に移った。
わたしはわがまま王女のドレスを着用し、叔父は無精髭をぜんぶ剃り落として皇帝陛下から借りたタキシードを着用した。
皇帝陛下はタキシードを、ヴィクトルは勲章がいっぱいぶら下がっている軍服の上にコートを着用している。
わたしは皇帝陛下の背中に、叔父はヴィクトルの背中に乗った。
たったそれだけで、あっという間に故郷ペレッティ王国の王都に戻ることが出来た。
二頭の神獣は、空を駆けたのである。
叔父も、こうして大陸の端からヴィクトルの背中にのってカッソーラ皇国に連れてきてもらったらしい。
数か月いなかっただけで、祖国はとんでもない危機にさらされていた。
カッソーラ皇国とはまた別の隣国ロラン帝国に攻め入られていたのである。
停戦の条件が、国王や王妃は幽閉、さらには人質を差し出すことらしい。
人質は、王太子と王女の二人である。
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