愛ゆえのざまぁ 3

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愛ゆえのざまぁ 3

 わたしたちが王宮に行ったとき、ちょうどロラン帝国の軍勢が王都を占拠し、王太子と王女が連行されるところだった。  人質といえばきこえはいいけど、ロラン帝国でさらし者にされた後に処刑される可能性が高い。  ロラン帝国は、カッソーラ皇国以上に悪名高い。  おそらく、国王や王妃、ほかの王族も遠からず処刑されてしまう。 「この女は?」 「ちょっと、放しなさいよ」  王宮の警備は解除されている。だから、堂々と王宮内に入ることが出来た。  いままさしく、義姉が占領軍の兵士を怒鳴りつけているのに遭遇した。 「その女は婚約者だ」  すでに手枷足枷でがんじがらめになっている王太子、つまりくそったれの元婚約者が叫んだ。 「な、なにを言っているのよ。あれだけ浮気をしまくっていて、どうしてそんなことが言えるの?」 「このあばずれ!おまえこそ、浮気をしまくっていただろう?」  言い合いをはじめた王太子と義姉を、占領軍の兵士たちは呆れ返って見ている。 「ヴィクトル。わたしが連中に挨拶をしている間に、占領軍の指揮官を連れて来ることは出来るか?」 「いやだな、兄上。そういうことを愚問っていうんですよ。将来の義理の姉に、いいところを見せることが出来てよかった」  皇帝陛下の命令に、ヴィクトルは可愛い顔にうれしそうな笑みを浮かべた。  その瞬間、彼の姿が消えた。 「さあ、行こう」  そして、彼は見苦しい言い合いをしている場に歩を進めた。 「やあ、きみがカヨ・アルベリーニの元婚約者かい?それから、わたしの本当の婚約者の王女ドミニク・ガリエだね?それから、そちらはカヨの義姉と義母、かな?」  王宮内の使用人たちに混じり、継母もいる。  突如現れた美形に、だれもが注目した。  無精髭のない叔父は、身内贔屓するわけじゃないけれどそこそこかっこいい。  そんな美形ぞろいの中、わたしだけ浮いている気がする。 「わたしは、カッソーラ皇国の皇帝ラウル・フランキ。そして、こちらはわたしの婚約者カヨ・アルベリーニとカヨの叔父のロック・アルベリーニ公爵(・・)。それから、これはわが皇国の大将軍ヴィクトル・フランキ」  その瞬間、ヴィクトルが現れた。それこそ、忽然とである。  彼は、立派な軍服に身を包んだ大男を伴っている。かと思った瞬間、彼はその大男を頭から地面におさえつけた。 「カッソーラ皇国?」 「獣人国?」  占領軍、王宮の人々たちの間から驚きの声が上がった。 「ロラン帝国軍の全将兵に告ぐ。司令官の命は、わたしの手の中にある。その場でじっとしていることをお勧めする。この司令官は脂がのりすぎているようだ。個人的には、もう少し脂っこくない方が好みなのでね」  ヴィクトルは、低く静かな声で占領軍を脅した。 「カヨ、どうにかしてくれ。その獣人にわたしを救うように言うんだ」 「カヨ、わたしを助けて。その獣人は、本来ならわたしの婚約者なのよ」  呆れかえってしまった。  元婚約者もわがまま王女も、どの口がそんなことを言わせるの?  まともな思考力じゃない。ついでに精神じゃない。 「カヨ、こんなクズ兄妹はどうでもいいわ。わたしたちを獣人国に迎えなさい」 「そうよ。そんな美形がわんさといる国ですもの。そっちの方が楽しいはずよ」  まともじゃないのはまだいる。  継母と義姉。いいえ、わたしにとっては赤の他人の母娘もまた、愚かきわまりない。
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