愛ゆえのざまぁ 4

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愛ゆえのざまぁ 4

「カヨ、どうする?きみの判断に任せるよ。叔父上のことは心配いらない。彼は、冒険者だけあって広い見識をお持ちだ。彼が望めば、わたしの側近に迎えていろいろ意見をきいてみたい」 「陛下、お気遣いありがとう。だが、おれは大丈夫。たとえ故国がなくなったしても、おれはまた冒険者に戻るだけのこと。アルベリーニ家はなくなるが、それもカヨとおれが生きてさえいれば血は後世につなぐことが出来る。まぁおれは生涯独身だったとしても、すくなくともカヨは残し、つなげてくれる。皇帝陛下、あなたという立派な夫と子どもともにね」  叔父の言葉に、思わず顔が火照るのを感じた。  それにしても、せっかく故国に戻って来たのに残念なことである。  皇帝陛下とヴィクトルの思いやりに感謝をした。そして、気遣いにも。  わたしは迷わなかった。皇帝陛下の問いについてかんがえるのに、そんなに時間を必要としなかった。 「陛下、故国が占領されたのは残念でなりません。これもひとえに、王族や官僚たちの怠慢です。こうなるまでに、彼らは対処をするべきでした。その為に、彼らは存在しているのです。彼らは国民に養われているにすぎません。そのかわり、彼らが国民を守って日々の生活をつつがなく送ることを保障しなければならないのです。それを蔑ろにした王族をはじめとする支配者階級を、たとえいまここで助けたとしてもいつかまた同様のことが起こるかもしれません」 「カヨ、なにを言いだすんだ。それが、婚約者の言葉か?」 「そうよ。あなたも恩恵に授かっていたんでしょう?」  元婚約者と王女の非難を受け、わたしは彼らににっこり微笑んだ。 「ざまぁみろ、よ」  そして、一言放ってやった。  ずっと言ってやりたかった言葉である。  それから、あらためて皇帝陛下にお願いをした。  わたしの祖国ペレッティ王国が隣国ロラン帝国に攻め入られてから、すでに二年の歳月が経っている。  祖国は、もうほとんど元の状態に戻っている。  いいえ。元の状態よりずっとよくなっている。  国民にとっては、という意味でだけど。  結局、ロラン帝国軍は手ぶらで帰国せねばならなくなった。  なぜなら、逆に自国が攻め入られているという急報が入ったからである。  攻め入ったのは、カッソーラ皇国軍である。  大陸随一と謳われているカッソーラ皇国軍に攻め入られ、ロラン帝国軍もずいぶんと慌てたことでしょう。  もちろん、それは、皇帝陛下がわたしの祖国を守ってくれる為の陽動である。、ロラン帝国軍が迎撃の準備を整えるまでには、カッソーラ皇国軍はさっさと撤退してしまった。  皇帝陛下は、知っていたのである。  わたしの祖国の状況を。そして、それを目の当たりにしたわたしが何をどう望むのかを。  何の罪のない国民は助けて欲しい。  皇帝陛下は何の見返りもないのにもかかわらず、わたしのその望みをきき入れ、かなえてくれた。  元婚約者であるくそったれの王太子やわがまま王女をはじめとする王族や官僚たちは、王宮から永遠に追放された。  とはいえ、全財産を没収されたわけではない。いま、彼らはペレッティ国の辺境にある別荘で細々と生活をしているらしい。  現在、ペレッティ国は、選挙で選ばれた有識者が中心になって国を動かしている。  いまのところ、ロラン帝国がふたたびペレッティ王国をどうにかしようという動きはない。  なぜなら、カッソーラ皇国が目を光らせているからである。  そうそう。結局、叔父は様々な国で見て来た見識の広さを買われ、ペレッティ国の官僚の一人として活躍している。  継母と義姉だった母娘は、行方不明である。  図太い二人のことである。どこかの国であらたなカモを見つけてしれっと暮らしているにちがいない。
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