「間違った感想」なんて無い

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 この辺りの価値観は、私が音大ピアノ科の出身で、ピアノ音楽に私なりに向き合ってきた中で形成されてきました。  クラシック音楽は「作曲家の意図に忠実に」表現するのが基本で王道で、伝統です。    それでも、クラシック界でも異端児(いたんじ)はいるもので、ピアニストのイーヴォ・ポゴレリチは独創的で個性的な「変わり者」としてショパンを鮮烈に弾きこなし、注目を集めた歴史があります。  昨年、YouTubeでも放映されて注目を集めたショパン国際ピアノコンクールは、長らくピアノ界の最大の権威として君臨しています。  1980年に開催(かいさい)されたショパンコンクールで、ポゴレリチは本選に落選しました。  しかし「彼こそ天才よ」と言ってその場を立ち去り抗議、審査員を辞任したマルタ・アルゲリッチは、ショパンコンクール優勝歴のある世界的に著名なピアニスト。  この逸話で、ポゴレリチは一躍(いちやく)有名になります。  私はポゴレリチの弾くショパン『ピアノソナタ第2番(葬送行進曲つき)』の録音に衝撃を受け、覚えるほどCDを聴き込みました。  伝統的な、抒情(じょじょう)豊かで流麗(りゅうれい)なショパンではなく、(かわ)いて飢えるように狂おしい、戦慄(せんりつ)のショパン。最高でした。
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