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僕は奴らを憎んだ。
だけど、圧倒的な体格差を前に勝てる見込みはどこにもなかった。
両親の仇も討てず、かと言ってこの場所を離れる決心もできない。
中途半端な気持ちのまま、それでも日々を生きねばならなかった。
「あれ、何なの?」
僕は年長の仲間にそう尋ねたことがある。
「一言で言えばバケモンだな」
「バケモン……」
「そう、バケモンだ。俺達のちっぽけな力じゃ到底太刀打ちできないバケモンだ」
「あいつらはなんで僕達に襲い掛かってくるの? 僕達はただここで生きているだけなのに」
「その通りだ。俺達が住処にしているのは、奴らのデカい体じゃ使えっこない狭い場所だ。それに俺達は奴らの目にできるだけ触れないよう時間帯もずらして生活してる。言ってみれば、わきまえてるって奴だ」
「けど、奴らは襲い掛かってくる」
「そう、襲い掛かってくる。必ずに近いレベルでな」
「どうしてだ? 奴らにとって僕達なんて取るに足らない生き物じゃないか。どうしてそんな執拗に僕達を攻撃する?」
「一つには縄張り意識の強さだろう。それと、食い物のバッティングだな。奴らの食い物は、俺達の食い物でもあるらしくてな。一人占めしたいってわけだ」
「それにしたって、僕達の食べる量何て僅かじゃないか。しかも奴らが寝ている間に食事は極力済ませてる。一体、何が不満なんだよ」
「さあな。ひょっとすると、世界のすべてを手中に収めよう、なんて事を考えてるのかもしれねぇ」
理解のできない話だった。
だが、現実問題として奴らは襲い掛かってくるのだ、殺すためだけに。
そう、奴らは僕達を餌にしているわけではない。
本当にただ殺され、無残な姿を晒すことを強要される。
縄張り意識や食べ物のバッティング、というだけでは説明しがたい何か。例えば憎しみのようなものがそこにはあるように思われた。
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