初めての人間作成

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初めての人間作成

 ヒロシくんは、夏休みの宿題で、人間を作ることにしました。  生まれて初めての経験です。でも、お父さんも小学4年生の時に人間を作ったと言っていました。お母さんも小学6年生の時に人間を作ったと言っていました。なので、ヒロシくんにもできないはずはありません。  事実、隣のおにいちゃんも、去年人間作りに挑戦して、上手に完成させていましたし。 「おかあさん!僕、今年の夏休みは人間を作る~!」  それに対して、おかあさんはこう答えます。 「アラアラ。小学3年生で人間は、まだ早いんじゃない?」 「大丈夫!僕、もうおっきくなったもん!」と、元気に答えるヒロシくん。 「そう?じゃあ、やってみなさい。何ごともチャレンジだからね」 「わ~い!」  …というわけで、人間を作り始めたヒロシくんですが、最初はなかなかうまくいきません。  フラスコの中で、ブクブクと紫色の謎の液体が泡立っていますが、人の形にはなってくれず、スライムのようなゲル状の生物が生まれるだけ。  何度もやり直して、どうやら「それらしき形」になってきました。  すると、ヒロシくんはフラスコから生物を取り出すと、強引に手足を引っ張ったり伸ばしたりし始めます。 「こうすれば、人間っぽくなるぞ~」  机の上で手足を引っ張られている裸の人間は「痛い!痛い!」と叫び声を上げています。  その声にもめげず、懸命に形を整えていくヒロシくん。  その後も、髪の毛を移植したり、手足のツメをつけたり、パンツや洋服まで作ってあげたりしていましたが、そこは小学3年生の子がすることです。しだいに飽きてきて、世話をするのも忘れてしまいました。  できあがった人間は、お腹がすいてピィピィと泣き声を上げますが、ヒロシくんは知らんぷり。ケージの中に閉じ込めた小さな人間は、段々と痩せ細っていきました。  そして、夏休み最終日。  気づくと人間は餓死しちゃっています。  仕方がないので、翌日の新学期、人間の干物を学校に持っていくヒロシくんでありました。
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