35. 何を伝えれば良いのでしょうか?

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35. 何を伝えれば良いのでしょうか?

 ところが彼が手に取ったものは凶器ではなく、携帯電話だった。それを私に差し出す。 「これは?」 「まぁ拾ったと言うか……君の薄気味悪い戯言は、このロックが解除できたら信じることにしよう」 『ラ、ララ様?』 『ええ、わたくしの携帯で間違いないわ。パスワードはね……』 『……はい、かしこまりました』  すかさず聞いた番号をうつ。するとララ様の美しい写真と思われるホーム画面が開いたーー。 「部長、解除しました」  ドヤ顔で彼に向けてその画面を見せる。 「あっ、あぁぁ……な、何てことだ……」 「これで分かって頂けましたか?」 「し、信じ難いが君の言うことは本当か……? 綾坂さんは……ララなのか?」  画面を見ながら部長は観念したかの様に、その場へ座り込んでしまった。 「私の心にララ様がいらっしゃいます。会話もできます。パスワードも先程教えてもらいました」 「……そうか。ララはそこに居るのか。それで君は彼女にそっくりなんだな。謝恩会でチラッと見た時からそう思ってたんだ。似てるってね」 「はい。宿った時から徐々に顔と身体が変化していったのです」  しょんぼりと頭を項垂れた部長は自分を納得させるためか、何度もうなづいた。 「ララと話させてくれないか?」 「は、はい。では聞いてみますね」 『ララ様? 何を伝えれば良いのでしょうか?』 『迷惑以外の何者でもない。さっさと自首しなさいって……それだけよ』 「あの部長、ララ様は……」  私はその言葉を伝えた。 「済まない。私は君に狂ってしまった。刺したのはセクハラがバレるからではなく、そこまでして私を拒否することが許せなかったのだ。ララ、本当に申し訳なかった。……これから警察へ出頭する」  よろよろと立ち上がった彼は会議室の扉を開ける。そこには人事労政Grの人たちが待ち構えていた。 「門前部長、貴方の出向は取り止めになりました。これから警察へ行きましょう」 「……分かりました」  労政の担当者は元警察官も含まれている。なので彼らに任せばもう心配はいらない。 「綾坂さん、迷惑をかけたね。では……」  両手を抱えられながら彼は連れて行かれた。  はぁーー。  極度の緊張感、恐怖心から開放された私は、ホッとしたのか壁にもたれかかってしまう。 『花、ありがとう。怖かったでしょう』 『無我夢中でした。あ、ララ様の携帯、私が持ってて良いのですか?』 『花にあげるわ。好きにして良いよ』 『では、じっくり見させてください』  先程のホーム画面が気になるのだ。初めてララ様の素顔が見れる。だけどーー、  ん? これは!?  その画像は笑顔のララ様だと思ってたけど、よく見ると〝綾坂花〟……つまり私が写っていたのだ。 『ララ様、この写真って?』 『わたくしの写真だけど?』 『いえ、これ私なのでは?』 『うふふ。わたくしたち元々似てるのよね』  えっ? い、いえ、ララ様が宿って私は変化したはずよ? おっぱいも大っきく育って、顔立ちだって……。 『まぁ、胸はわたくしの影響かもしれないけど、後はそんなに変化してないのよ』 『そ、そんなわけありません』  これがララ様の素顔ならば、自分とそっくりではないか。私はこれまでの? 『ララ様、本当にたまたま私を見つけ、肉体へ入り込んだのですか? それとも……?』
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