10: 小さな虹

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

10: 小さな虹

「友達」ってなんなのだろう...... 胡桃と真美は友達だ。 一緒にいると楽しいし、二人だけの秘密も 約束事もある。 真美が喜ぶなら、自分に出来る事なら 何でもしてあげられるし、 同じように真美も胡桃が喜ぶ事をしてくれる。 小さな事でも笑えるし、 どんどん話が盛り上がる。 たとえ話をしていなくても、目を合わせると、 ニコッとお互い笑顔になる。 胡桃にとって真美はとっても大切な友達だ。 胡桃は香織の弟に「お姉ちゃんの友達?」と 聞かれたとき、「友達だよ」と答えた。 そして、香織が少し照れたような声で、 「お姉ちゃんの友達」と繰り返した時、 胡桃は少し安心し、嬉しかった。 いつも一人でいて、何にもしていないのに 洋子や男子たちから苛められてしまう香織が 可愛そうだった。 なんだか気の毒で、助けてあげたかった。 でも、自分が怒っても洋子たちが素直に 止めるとは思えなかったし、そんな勇気も 無かった。 だから、時々話し掛けるとか、一度だけだけど 一緒に帰るとかしか出来なかったのだ。 でも、香織から胡桃に対して何か求めて来る ことはなかった。 香織が胡桃のした事に対して喜んでいたのかも、実際分からない。 そして何も言わずに、 香織は引っ越してしまった。 胡桃は香織にお揃いのタオルをプレゼント する事で、もう少し仲の良い友達になれる ような気がしていたのだ。 なのに、 そうする前に香織がいなくなってしまった。 胡桃は真美と並んで廊下を歩きながら、 香織の事を考えていた。 すると真美は、胡桃の手をとった。 真美の手は柔らかくてプニプニしていて 握っていて気持ちが良い。 そう言うと真美はいつも頬を膨らませるが、 胡桃は真美の手が大好きだ。 「気をつけて帰って下さいね」 昇降口を出ると、 花壇のヒマワリに水やりをしていた校長先生が、胡桃と真美に声をかけた。 「はい! 校長先生、さようなら」 「さようなら~」 背が高く優しい顔をした校長先生に元気よく 挨拶をして校庭に出ると、スプリンクラーが 突然回りはじめた。 胡桃と真美は「きゃっ!」と叫びながら、 クルクル回るスプリンクラーを避けながら 走り出した。 「虹だ~!」 真美が指差す方を見ると、カラカラに乾いて いた校庭に太陽の光が反射して、キラキラと した水が降り注ぎ、小さな虹が出来ていた。 胡桃と真美は得した気分になり、 笑いながら通い慣れた道を帰って行った......
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!