ほろ酔いラッキービターキス

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「えっ……ちょ、ちょっと待ってよ……」 「俺、あいつが『柳田に酒を飲ませよう。キス魔になったところを後輩たちに見せれば面白い』って言ってるのを聞いたんだ」 「何それ……」 「俺はそれが許せなかったんだ。だけど先輩、本当は気付いたよね? あいつの性格。なのに言うことを聞いてお酒を飲んでるから、すごく悔しかった」  一成は利麻の頬に手を当てると、自分の方へ向ける。先ほどのことで警戒していた利麻は、慌てて口元を手で押さえた。 「じゃあここで問題。ねぇ先輩、あの時に何があったか覚えてない?」 「……わからないよ。だって酔ってて記憶がないんだもん」  利麻は怪訝そうな顔で一成を見つめる。しかし彼は表情を変えず、利麻の反応を楽しんでいるようだった。  その様子にイラッとした利麻は、力ずくで彼の手を振り払うと、立ち上がり店のドアを開ける。 「言ったよね。今日は閉店です。何も言うつもりがないならもうお帰りください」  一成を外に促すように話しかける。しかし彼もそんなことで引こうとはしない。ショーケースの前に座ったままプイッと顔を背けた。 「ちゃんと答えてくれないと帰らないよ」 「はぁ? 私はわからないって言った……」 「俺、あの時一応告白したんだけど」 「で、でも……昔のことじゃない」 「今もって言ったら信じる?」 「信じません。ほら、早く帰って……」  そう言いかけた時、座ったまま利麻を見上げている一成の視線に、何か懐かしいものを感じる。
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