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 お茶とお煎餅、それとお饅頭を猫に囲まれながら食べた。一匹増えても何も変わらない、他の猫たちが勝手に面倒を見てくれると、子猫の件は快諾してくれた。私たちは嬉しくて嬉しくて手を合わせて喜んだ。 「んで、お兄ちゃんは元気け?もうしばらく見てねぇから」 「元気にしてますよ。夜はバイトに行っちゃうからあんまり会わないけど」 「そんならいがったー。絵が上手でなー!よーくここさ来てじーっとにゃーこめのこと見て描いて、いんやー大したもんだと思ったんだ。今もこうして飾らしてもらってほんとありがたいよー」  視線の先には画鋲でとめられた鉛筆画が5枚ほど飾られている。そのうち4枚は猫のみをスケッチしたもの。真ん中の一枚だけは縁側に腰掛けて眠っている猫ばあさんと、膝の上や、横、足元で猫たちが一緒にくつろいでいる絵だった。嘘のない絵、飾り気のない絵だから、兄がこの場所を好きだったことが手に取るようにわかった。
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