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黒い毛
思わずこっちゃんと顔を見合わせる。真ん丸に開いた目。驚いてるけど、ちょっとだけわくわくの色の混じったキレイな黒目。かわいいな、そりゃ男子が見惚れるわけだって妙に納得した。
何も言わずに二人で振り返る。ところどころ穴の空いた青いネットから、いくつかの変色したゴミと、回収日を間違えたカン・ビンの袋が顔を覗かせている。私が少しだけ悩んでる間に、こっちゃんはササッとゴミ捨て場に移動して、顔を右に左に動かして声の主を探している。
「いた!」
膝丈まである雑草の中を進んで、ゴミ捨て場の裏側まで回ったこっちゃんはそれを捕まえた。あ、捕まえるんだって、私はちょっと思った。
「ちっちゃーい!みきちゃん見てー!」
「うわ、かわいい、ちっちゃい」
胸がドキドキした。手のひらに乗った、黒くて長い毛。思わず私はその子を撫でた。
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