吾が輩は猫である

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吾が輩は猫である

少し肌寒い快晴の空の下、僕はアスファルトの上を当ても無く歩いている。太陽の位置から予想するに、時刻は朝10時ぐらい? 季節は春? 秋? ちょっと分からないけど、山が紅葉していないところを見ると3月ぐらいかな。 僕は猫……あっ! 夏目漱石風に自己紹介をすると、 『吾輩は猫である。名前はまだ無い。どこで生れたかとんと見当がつかぬ』 凄いでしょ? こんなに頭の良い猫を知ってる人なんていないよね? 僕は多分、天才猫なんだ。天才犬ってのは聞いた事あるけど、天才猫って聞かないよね? 人間の話してる事だって理解出来るんだ。さっき、大声で会話しているおばさん達の話を盗み聞きしたんだけど、ほとんど理解出来た。旦那さんの文句を互いに言って、いかに自分の旦那がダメかを競いあっていた。 猫って聴力が優れているんだね。でも、喋る事は出来ない。どう頑張ってもニャオーってなっちゃう。低音と高音を使い分ける事が出来るぐらいかな。猫撫で声も練習しないとダメだね。 実は、僕が自分の事を猫だって気付いたのは、ほんの1時間程前なんだ。記憶喪失ってやつだと思う。猫にも記憶喪失があるんだね。首輪がついていないから、飼い猫では無かったのかな? 取り敢えず、ちょっとお腹が空いてきたから、何か餌を食べたい。野良猫って何を食べるんだろう? キャットフードが都合良く落ちてる訳無いし、まさかゴミなんて漁る気にはなれない。
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