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【Game1】達者クンは諦めが悪い
「ま、待て! 逃げても無駄だ!」
日曜日の昼下がり。
校舎の廊下を全力で逃げる俺を、助けてくれる人はいない。
「くそっ、行き止まりだ!」
振り返ると、奴がすぐ後ろに迫っていた。
「も、も、もう逃げられないぞぉ……。そ、それをおとなしく渡すんだな」
「嫌だ。これは俺のだ」
「お、お前の? う、嘘つくなよ、この性悪イケメンが!」
「あざっす」
「ほ、ほほ褒めてねえし!」
俺を壁に追い詰めた、アキバ系オタク。奴の胸元に付いた名札に目をやる。
名前は……「達者デナ」?
いや、どこのハーフだよ。興味ねえけど。
「あっ! あっ! お、お前、今、僕の名前見てただろ!? へ、変だと思ったんだろ!?」
「うん、変な名前」
やべっ。つい、本音が口に。
アキバ系の顔が、あっという間に真っ赤になった。
「お、お、お前に言われたくないっ! お、お前なんてイケメンのくせに、名前が『河合壮』じゃないか!」
「や、やめろ! それは言うな!」
俺は、自分の名前がコンプレックスだ。
「かわいそう」。その発音を聞くだけで、発疹が出る。
「な、なな何度だって言ってやるぅー! 河合壮! く、口が悪くて女子に嫌われる、顔だけの残念イケメン河合壮!」
「やめろおお!」
「か、かわいそうなイケメン! かわいそう! ブフーッ!」
吹き出すアキバ野郎。コイツをボッコボコにしてやりたいが、ルール上できない。
全身に発疹が浮かび上がり、耐えきれずに俺はあちらこちらを搔きむしる。
その時、ピンポンパンポーンという音が響き、校内放送が流れた。
――達者デナくん、他の参加者を負傷させたため失格。「退場」となります。
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