【Last Game】広恵ちゃんは壮クンが大好き!

1/2
前へ
/13ページ
次へ

【Last Game】広恵ちゃんは壮クンが大好き!

   校舎はついに、俺とバレ子と地味女だけになった。  俺はもう、クリアしようなんて思っていない。  もう疲れた。 「か、河合くん」  ふいに声をかけられ、俺は力なく顔を上げた。 「いいよ、無理すんな。あと、俺しか残ってないもんな」  予想通り、地味女がチョコを手に近づいてきた。 「私、吾味(ごみ)広恵(ひろえ)って言います……。河合くん、あの」 「だから、いらねえって。本当は俺じゃない奴が良かったんだろ?」  どうせ俺はモテないんだ。  このまま、元のモテない人生へ戻る。それでいい。 「ち、違うの、聞いて。私……ずっと前から、河合くんのことが好きだったんです」 「そういう冗談いらないの、今……」 「本当です。今まで勇気が出なくて。でも、こんなチャンスをもらえたから……」  そう言うと、彼女は赤い箱をズイッと差し出した。 「受け取ってください。お願いします!」  相手に気持ちがないのにゲームクリアしたって、嬉しくないんだけどな。  もう、モテなくていい。  だから、たった一人だけ、俺を好きになってくれる人が欲しい。  その時、吾味の体が近づき、柔らかい唇が、俺の乾いた唇に触れた。 「……えっ?」  彼女は顔を赤らめながら、俺の掌にチョコを押しつけた。 「これで信じてもらえますか?」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加