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【Last Game】広恵ちゃんは壮クンが大好き!
校舎はついに、俺とバレ子と地味女だけになった。
俺はもう、クリアしようなんて思っていない。
もう疲れた。
「か、河合くん」
ふいに声をかけられ、俺は力なく顔を上げた。
「いいよ、無理すんな。あと、俺しか残ってないもんな」
予想通り、地味女がチョコを手に近づいてきた。
「私、吾味広恵って言います……。河合くん、あの」
「だから、いらねえって。本当は俺じゃない奴が良かったんだろ?」
どうせ俺はモテないんだ。
このまま、元のモテない人生へ戻る。それでいい。
「ち、違うの、聞いて。私……ずっと前から、河合くんのことが好きだったんです」
「そういう冗談いらないの、今……」
「本当です。今まで勇気が出なくて。でも、こんなチャンスをもらえたから……」
そう言うと、彼女は赤い箱をズイッと差し出した。
「受け取ってください。お願いします!」
相手に気持ちがないのにゲームクリアしたって、嬉しくないんだけどな。
もう、モテなくていい。
だから、たった一人だけ、俺を好きになってくれる人が欲しい。
その時、吾味の体が近づき、柔らかい唇が、俺の乾いた唇に触れた。
「……えっ?」
彼女は顔を赤らめながら、俺の掌にチョコを押しつけた。
「これで信じてもらえますか?」
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